2015年12月3日木曜日

渇水の渓

2015年 6月

新宿でNさんと待ち合わせ、Jさんの車に乗せてもらい一路目的の川へ。

前日泊、車止めから少し歩いた堰堤横の屋根付きの道で少し酒を飲んだ。
釣行前の、期待と不安の入り混じったワクワクした気持ち。
興奮を抑えて、しばし仮眠をとる。

翌朝、晴れ。
唯一、心配するとしたら水量くらい。
5時前に支度を終えてすぐに入渓した。

が、釣りになるのは川通しで2時間ほど歩いた先の大きな滝の上から。
ところどころ崩れた、川沿いに通ったかつての仕事道を使って進む。

急いで足を進めたおかげで7時には滝の上に出るが、谷の底はまだ気温も水温も低かった。
しばしの休憩をとることにする。



30分後にとりあえず、といった感じで竿を出すがまったくと言っていいほど反応がないw。
渓相がいいだけになんだか期待外れな気持ちもありつつ、進んだ。

一時間弱ほど進んだところで、途中の支流にJさんが入る。
本流をずっと進んだ先に、待ち合わせ兼渓泊地を決めてNさんと釣り進むことにする。

実はJさんの入った支流、以前から気になっていた。
待ち合わせ後に渓相など詳細を聞きたいと思った。

その後本流筋はあいかわらず、渋い。
この際、釣りの腕は置いておくとして、やはり水量が少ないようだ。

昼近くになると谷にも日が差し、ずいぶんとムシ暑くなってきた。
なんとか納得のいく1匹を!という思いで竿を振った。

木々が折り重なるように伸び、その周辺だけ川が薄暗くなったエリアがあった。
大きな岩が寄せ集まった中にある淀んだ流れ。
底はまあまあ深そう。
ソッと小さめのフライを流した。ほぼダメ元。
流してすぐに反応がなければピックアップしよう、と思った瞬間に黒い影がフライ目掛けてギュンッと近づいた。
水面に岩魚の開いた口が見えたと同時に手首を上げていた。

普段よりもずいぶんと早い合わせ方。
一瞬、駄目だったか?という思いとは裏腹に鉤はしっかりと岩魚にかかっていた。
待望の1匹目は薄暗い流れの象徴のような、黒っぽい岩魚。 8寸ほど。



その後も竿を振りながら遡行を続けていくと、視線の向こうに取水堰堤が見えた。
この堰堤で大分水を取られていたようだ。
本流筋の本命はこの取水堰堤より向こうだったようだ。
なんだかこれまでのエリアの渋さがくたびれもうけだった気分と、新たな希望が出てきたとても複雑な気分になったw。

堰堤脇の梯子をつたって越すと、目の前には「どうぞ渓泊をしてください」と言わんばかりのちょうど良く広い河原があった。
少し進んだ奥には農ポリが張りやすそうな枝が出ている場所もある。
Jさんと打ち合わせた合流場所がちょうどここだったことを思い出した。

肝心の川は、取水堰堤で水を取られることもなく悠々と流れていた。
すぐにNさんが一匹釣り上げる。
岩魚の型も堰堤手前より良さそうだ。

とりあえず渓泊地にザックを下ろして、Jさんが気づきやすい目印を川の向こう岸とこちらの両方にテープやシュラフを巻いてセットする。
少しの休憩を取って出撃。

渓相はしばらく大きな岩のないチャラ瀬が続く。
川幅は広すぎず狭すぎず。竿が振りやすい木々の茂り方。
Nさんが立て続けに何匹か釣っている。
少しだけ焦っていた。



そんな気分の中、大場所とは言えない小さなプールの、そのまた手前の流れにフライを落とし、
しばらく流れるに任せて見守っていた。
そろそろドラグがかかりそうだな、と思いかけた矢先に白っぽい底石の中から
ユラりと影が動いた。岩魚が、出た。

近づいてきた最初から動きが見えていたせいで、この時は一呼吸おいて腕をあげた。
しっかりと鉤がかかった。
8寸程度かと思ったその岩魚は釣り上げると尺に近いものだった。
(てっきり尺岩魚と思っていたがテン場に戻ってメジャーで測ると尺にわずかに足らない泣き尺だった。。)



その後もしばらく竿を振り続け3時半を過ぎたあたりで納竿とした。
残りは明日に取っておくことにする。

渓泊地にもどると、すでにJさんが薪を集めている最中だった。
Jさんの入った支流ではなかなかの釣果だったようだ。
大きな滝を巻くとのこと。いつか入ってみたい支流が増えた。

焚火をおまかせし、自分は米を研いだり簡単なおつまみを作ったり。
釣った岩魚の下ごしらえも3人で済ませる。
落ち着いたあとには川で冷やしておいたビールで乾杯。沁みた。

夜のメニューは、岩魚汁とNさんが岩魚の刺身と寿司をこしらえてくれた。
刺身は何度か食べたことがあるが、寿司は初めてだった。
そして、Jさんが持ってきてくれたモツ炒めをいただいて満腹。
最高の晩御飯となった。



結局農ポリは張らずに、焚火の周りに陣取る。
Jさんがジャズを流しながらウイスキーをちびちび飲んでいる。
Nさんは早々に寝に入ったようだ。
近くには川の流れる音がする。
夜がふけていった。



すでに日の出も過ぎた5時頃、突然の雨で目を覚ます。
予報では曇りの予定だったが、山の天気はそうはいかなかったようだ。
3人同時にバッと起きて、あっという間に農ポリを2枚、つないで張った。
Jさんの指示の下、起きてから張り終わるまでの時間、約10分。
まさに電光石火の仕事ぶりだった。



張り終わったあとはすぐにシュラフにもぐりこみ2度寝に入った。

7時過ぎ、モソモソと起きだして朝ごはん。
9時近くに釣り始めた。

この日は本流を釣り上がれるだけ進んで納竿する予定。
3人でポイントを交代しながら釣りあがった。

2日目のことはあまり記憶に残っていない。。。
なぜならボーズだったからw。

Jさんが早々に尺を釣り上げたのと、Nさんが連発していたのは覚えている。
渓泊地からずいぶんと進んだ先まで渓相は平坦なものだった。
源頭に近くなれば変わるのだろうか。

昼近くになりタイムアップとなり渓泊地にもどる。
そのままデポした荷物をまとめて、ソーメンを12束茹でて、食べきった。

炎天下の中、沢通しに護岸された林道を延々と3時間半歩き続けて
入渓点となった発電所までもどった。
そのまま車までスムーズに戻りたかったが、ちょうど車止めで工事をしていて
工事現場を大きく巻いて、車に着いた。

帰りは地元でラーメン&温泉コース。
温泉に入って帰ると翌日の疲れの残り方が格段に違う。

釣果はなかなか渋めだったが、思い出深い釣行だった。
次回来るとしたら迷わず取水堰堤 より先をめざして釣り始めたい。













2015年12月1日火曜日

新緑の川

2015年5月

Nさんとの北関東での釣行。

自分は何度も通っている川。
今回はNさんを案内するべく、計画を立てた。

初日、早朝から雨降りにあう。
ザーザーと雨が本降りとなる中、古くからある仕事道を延々と2時間ほど歩く。
途中、目についた山椒の葉を採りながら他の山菜も探すが、目ぼしいものは見つからない。
雨は本降りからだんだんとシトシトといった感じの弱い雨に変わっていく。

目的の川は増水していないか?水温はどうだろう?
二人で気にしながらも黙々と歩いた。

入渓地点でしばしの休憩。Nさんにサンドイッチをごちそうになる。
ガーリックバターを塗ったバゲットにチーズとベーコンを乗せたシンプルなサンドイッチ。
これがとてもおいしい。次回の釣行から真似することにする。

入渓時点では気温は少し低め。
ひとまず竿を出して様子を見ることにする。
Nさんが早々に一匹目の岩魚を釣った。案内役としては一安心した。

   ネギを背負ったフライマン

渓相は最高と言っていい。増水の心配は無用だった。
一級ポイントを交互にフライを流すが、なぜか自分には一匹目が出ない。

フライが合っていないのか、それともドラグがかかっているのか。 両方か。
焦る気持ちを抑えて、慎重にフライを流す。
雨は降ったり止んだりを繰り返していた。

もっと岩魚が出てきていいはずだが、ここぞというポイントでもまったく反応がなかったりする。
Nさんと相談し、ひとまず雨が落ち着くまで休憩することにする。

休憩すること30分、雨も止んで日が差してきた。
いてもたってもいられず、ロッドを振ることにした。
すると、自分にも待望の一匹目が出た。型は7寸ほど。
大きくはないけど、最初の一匹はいつもうれしい。

そこから3時間ほど、難所もなく二人でゆっくりと釣り上がった。
少ないながらも、だんだんと釣れる岩魚も大きくなっていく。

新緑の中で

5月の新緑の中、 日がさすと川はキラキラとまぶしい。
釣れた岩魚もとてもきれいだった。
夢中になってロッドを振りながらも、木々の瑞々しさや川のきらめきに、ふと足を止めて見入ってしまう。
こんな時、釣りをしてきて本当に良かったと思う。そしてまたラインをリールから出してロッドを振りだす。

いくつかのプールが続いた後に、平坦ながらもゴロゴロとした大小いくつもの岩がひしめいている流れがあった。
この区間で自分は今回の釣行で一番の釣果を得る。


ここぞ、というポイントには必ず岩魚がいた。
一度食い損ねるも追い食いしてくる岩魚もいた。
それまでの区間がなかなか渋かったこともあって、興奮しながらロッドを振った。

今夜のおかずとする岩魚も確保して目的の渓泊地にたどり着く。
時間は4時ぐらいだっただろうか。
農ポリをササッと張ってとりあえずビールで乾杯。めちゃくちゃうまい。
落ち着いたところで焚火をおこす。
米も研いで水にひたした。

 渓泊地

岩魚の刺身と、おすまし仕立ての岩魚汁をメインに、摘んできた山椒の葉の佃煮、モツと皮のバターソテー、家から持ってきた行者ニンニクの醤油漬け、それと卵かけご飯。
どれも最高だった。

山椒の葉を煮詰める
おつまみセット

満腹になったあとはウイスキーをちびちび飲みながら、岩魚の焼枯らしを仕込んだ。

   焼枯らし

もう、雨の心配はなかった。夜空に星がよく見えた。
いつのまにかシュラフにもぐりこんで寝てしまっていた。

翌日、朝から快晴。
この日は昼過ぎまで釣ったら帰る予定だ。

朝ごはんに米を炊いて、半分を昨晩の岩魚汁の残りと合わせておじやに。
もう半分は焼枯らした岩魚を混ぜたおにぎりにした。
おにぎりは行動食として。

   卵を落としたおじや

9時過ぎから川に立つがまだ水温は低い。
昨日と同様、河原に寝転んで水温が上がってくるのを待った。
10時近くになってようやく動き出す。

渓泊地からしばらく遡行すると川は二俣に分かれる。
その二俣の右側の沢にまずは入った。

これまでの開けた渓相から一転、右側の沢は木が張り出して薄暗い雰囲気の沢だった。
それでも大小の岩がつくる落ち込みや小さなプールが点在し、いかにも岩魚がひそんでいそうな渓相だった。
両脇の岩には濡れた苔がびっしりと生えている。
滑らないよう気を付けながら慎重にロッドを振った。

まだ水温が低いままなのか、しばらくロッドを振るも目ぼしい当たりはない。
遠くの方に滝の落ちる音が聞こえてきた。

滝の手前、水の勢いが一段と激しくなった流れの中にある、岩と岩の間。
ゆったりとした小さな窪みに、ポトリとフライを落とす。
落とした瞬間、岩魚がバクッと口を開けて顔を見せた。
無意識にロッドをあげる。と、同時に鉤がかかっていた。
大きさは8寸ほど。
この岩魚が今回の釣行で一番強い引きだった。暴れながら元の岩の陰に戻ろうとするところを慎重にラインを手繰ってネットに収めた。



目の前の滝は比較的緩い傾斜で、左側から簡単に越すことができた。そのあと、1匹釣り上げてNさんと示し合わせて沢を戻ることにする。

二俣まで戻ったところで、どうせならということで今度は左側の沢を少しだけ釣った。こちらは開けていてロッドも振りやすく、途中までは流れも平坦だった。

すぐに6寸ほどの岩魚が釣れた。その後も4〜5匹釣るが、大物には出会わず終い。
12時を過ぎると、気温はずいぶん高く、緑に囲まれた川は春から初夏へと移り変わっていた。

後ろ髪を引かれながらも、また来ましょう、と言い合って帰ることにした。
昨日とは一転して明るい仕事道を延々と歩く。いつもそうだが、帰り道はやたらと長く感じる。

やっとの思いで車止めにたどり着いたあとは、コンビニに向かい、コーラ。
大げさではなく全身に染み渡るおいしさだった。
その後地元の温泉に入って帰途に着いた。

次に来るときもやはりこの季節を選んで来ると思う。