2015年12月3日木曜日

渇水の渓

2015年 6月

新宿でNさんと待ち合わせ、Jさんの車に乗せてもらい一路目的の川へ。

前日泊、車止めから少し歩いた堰堤横の屋根付きの道で少し酒を飲んだ。
釣行前の、期待と不安の入り混じったワクワクした気持ち。
興奮を抑えて、しばし仮眠をとる。

翌朝、晴れ。
唯一、心配するとしたら水量くらい。
5時前に支度を終えてすぐに入渓した。

が、釣りになるのは川通しで2時間ほど歩いた先の大きな滝の上から。
ところどころ崩れた、川沿いに通ったかつての仕事道を使って進む。

急いで足を進めたおかげで7時には滝の上に出るが、谷の底はまだ気温も水温も低かった。
しばしの休憩をとることにする。



30分後にとりあえず、といった感じで竿を出すがまったくと言っていいほど反応がないw。
渓相がいいだけになんだか期待外れな気持ちもありつつ、進んだ。

一時間弱ほど進んだところで、途中の支流にJさんが入る。
本流をずっと進んだ先に、待ち合わせ兼渓泊地を決めてNさんと釣り進むことにする。

実はJさんの入った支流、以前から気になっていた。
待ち合わせ後に渓相など詳細を聞きたいと思った。

その後本流筋はあいかわらず、渋い。
この際、釣りの腕は置いておくとして、やはり水量が少ないようだ。

昼近くになると谷にも日が差し、ずいぶんとムシ暑くなってきた。
なんとか納得のいく1匹を!という思いで竿を振った。

木々が折り重なるように伸び、その周辺だけ川が薄暗くなったエリアがあった。
大きな岩が寄せ集まった中にある淀んだ流れ。
底はまあまあ深そう。
ソッと小さめのフライを流した。ほぼダメ元。
流してすぐに反応がなければピックアップしよう、と思った瞬間に黒い影がフライ目掛けてギュンッと近づいた。
水面に岩魚の開いた口が見えたと同時に手首を上げていた。

普段よりもずいぶんと早い合わせ方。
一瞬、駄目だったか?という思いとは裏腹に鉤はしっかりと岩魚にかかっていた。
待望の1匹目は薄暗い流れの象徴のような、黒っぽい岩魚。 8寸ほど。



その後も竿を振りながら遡行を続けていくと、視線の向こうに取水堰堤が見えた。
この堰堤で大分水を取られていたようだ。
本流筋の本命はこの取水堰堤より向こうだったようだ。
なんだかこれまでのエリアの渋さがくたびれもうけだった気分と、新たな希望が出てきたとても複雑な気分になったw。

堰堤脇の梯子をつたって越すと、目の前には「どうぞ渓泊をしてください」と言わんばかりのちょうど良く広い河原があった。
少し進んだ奥には農ポリが張りやすそうな枝が出ている場所もある。
Jさんと打ち合わせた合流場所がちょうどここだったことを思い出した。

肝心の川は、取水堰堤で水を取られることもなく悠々と流れていた。
すぐにNさんが一匹釣り上げる。
岩魚の型も堰堤手前より良さそうだ。

とりあえず渓泊地にザックを下ろして、Jさんが気づきやすい目印を川の向こう岸とこちらの両方にテープやシュラフを巻いてセットする。
少しの休憩を取って出撃。

渓相はしばらく大きな岩のないチャラ瀬が続く。
川幅は広すぎず狭すぎず。竿が振りやすい木々の茂り方。
Nさんが立て続けに何匹か釣っている。
少しだけ焦っていた。



そんな気分の中、大場所とは言えない小さなプールの、そのまた手前の流れにフライを落とし、
しばらく流れるに任せて見守っていた。
そろそろドラグがかかりそうだな、と思いかけた矢先に白っぽい底石の中から
ユラりと影が動いた。岩魚が、出た。

近づいてきた最初から動きが見えていたせいで、この時は一呼吸おいて腕をあげた。
しっかりと鉤がかかった。
8寸程度かと思ったその岩魚は釣り上げると尺に近いものだった。
(てっきり尺岩魚と思っていたがテン場に戻ってメジャーで測ると尺にわずかに足らない泣き尺だった。。)



その後もしばらく竿を振り続け3時半を過ぎたあたりで納竿とした。
残りは明日に取っておくことにする。

渓泊地にもどると、すでにJさんが薪を集めている最中だった。
Jさんの入った支流ではなかなかの釣果だったようだ。
大きな滝を巻くとのこと。いつか入ってみたい支流が増えた。

焚火をおまかせし、自分は米を研いだり簡単なおつまみを作ったり。
釣った岩魚の下ごしらえも3人で済ませる。
落ち着いたあとには川で冷やしておいたビールで乾杯。沁みた。

夜のメニューは、岩魚汁とNさんが岩魚の刺身と寿司をこしらえてくれた。
刺身は何度か食べたことがあるが、寿司は初めてだった。
そして、Jさんが持ってきてくれたモツ炒めをいただいて満腹。
最高の晩御飯となった。



結局農ポリは張らずに、焚火の周りに陣取る。
Jさんがジャズを流しながらウイスキーをちびちび飲んでいる。
Nさんは早々に寝に入ったようだ。
近くには川の流れる音がする。
夜がふけていった。



すでに日の出も過ぎた5時頃、突然の雨で目を覚ます。
予報では曇りの予定だったが、山の天気はそうはいかなかったようだ。
3人同時にバッと起きて、あっという間に農ポリを2枚、つないで張った。
Jさんの指示の下、起きてから張り終わるまでの時間、約10分。
まさに電光石火の仕事ぶりだった。



張り終わったあとはすぐにシュラフにもぐりこみ2度寝に入った。

7時過ぎ、モソモソと起きだして朝ごはん。
9時近くに釣り始めた。

この日は本流を釣り上がれるだけ進んで納竿する予定。
3人でポイントを交代しながら釣りあがった。

2日目のことはあまり記憶に残っていない。。。
なぜならボーズだったからw。

Jさんが早々に尺を釣り上げたのと、Nさんが連発していたのは覚えている。
渓泊地からずいぶんと進んだ先まで渓相は平坦なものだった。
源頭に近くなれば変わるのだろうか。

昼近くになりタイムアップとなり渓泊地にもどる。
そのままデポした荷物をまとめて、ソーメンを12束茹でて、食べきった。

炎天下の中、沢通しに護岸された林道を延々と3時間半歩き続けて
入渓点となった発電所までもどった。
そのまま車までスムーズに戻りたかったが、ちょうど車止めで工事をしていて
工事現場を大きく巻いて、車に着いた。

帰りは地元でラーメン&温泉コース。
温泉に入って帰ると翌日の疲れの残り方が格段に違う。

釣果はなかなか渋めだったが、思い出深い釣行だった。
次回来るとしたら迷わず取水堰堤 より先をめざして釣り始めたい。













2015年12月1日火曜日

新緑の川

2015年5月

Nさんとの北関東での釣行。

自分は何度も通っている川。
今回はNさんを案内するべく、計画を立てた。

初日、早朝から雨降りにあう。
ザーザーと雨が本降りとなる中、古くからある仕事道を延々と2時間ほど歩く。
途中、目についた山椒の葉を採りながら他の山菜も探すが、目ぼしいものは見つからない。
雨は本降りからだんだんとシトシトといった感じの弱い雨に変わっていく。

目的の川は増水していないか?水温はどうだろう?
二人で気にしながらも黙々と歩いた。

入渓地点でしばしの休憩。Nさんにサンドイッチをごちそうになる。
ガーリックバターを塗ったバゲットにチーズとベーコンを乗せたシンプルなサンドイッチ。
これがとてもおいしい。次回の釣行から真似することにする。

入渓時点では気温は少し低め。
ひとまず竿を出して様子を見ることにする。
Nさんが早々に一匹目の岩魚を釣った。案内役としては一安心した。

   ネギを背負ったフライマン

渓相は最高と言っていい。増水の心配は無用だった。
一級ポイントを交互にフライを流すが、なぜか自分には一匹目が出ない。

フライが合っていないのか、それともドラグがかかっているのか。 両方か。
焦る気持ちを抑えて、慎重にフライを流す。
雨は降ったり止んだりを繰り返していた。

もっと岩魚が出てきていいはずだが、ここぞというポイントでもまったく反応がなかったりする。
Nさんと相談し、ひとまず雨が落ち着くまで休憩することにする。

休憩すること30分、雨も止んで日が差してきた。
いてもたってもいられず、ロッドを振ることにした。
すると、自分にも待望の一匹目が出た。型は7寸ほど。
大きくはないけど、最初の一匹はいつもうれしい。

そこから3時間ほど、難所もなく二人でゆっくりと釣り上がった。
少ないながらも、だんだんと釣れる岩魚も大きくなっていく。

新緑の中で

5月の新緑の中、 日がさすと川はキラキラとまぶしい。
釣れた岩魚もとてもきれいだった。
夢中になってロッドを振りながらも、木々の瑞々しさや川のきらめきに、ふと足を止めて見入ってしまう。
こんな時、釣りをしてきて本当に良かったと思う。そしてまたラインをリールから出してロッドを振りだす。

いくつかのプールが続いた後に、平坦ながらもゴロゴロとした大小いくつもの岩がひしめいている流れがあった。
この区間で自分は今回の釣行で一番の釣果を得る。


ここぞ、というポイントには必ず岩魚がいた。
一度食い損ねるも追い食いしてくる岩魚もいた。
それまでの区間がなかなか渋かったこともあって、興奮しながらロッドを振った。

今夜のおかずとする岩魚も確保して目的の渓泊地にたどり着く。
時間は4時ぐらいだっただろうか。
農ポリをササッと張ってとりあえずビールで乾杯。めちゃくちゃうまい。
落ち着いたところで焚火をおこす。
米も研いで水にひたした。

 渓泊地

岩魚の刺身と、おすまし仕立ての岩魚汁をメインに、摘んできた山椒の葉の佃煮、モツと皮のバターソテー、家から持ってきた行者ニンニクの醤油漬け、それと卵かけご飯。
どれも最高だった。

山椒の葉を煮詰める
おつまみセット

満腹になったあとはウイスキーをちびちび飲みながら、岩魚の焼枯らしを仕込んだ。

   焼枯らし

もう、雨の心配はなかった。夜空に星がよく見えた。
いつのまにかシュラフにもぐりこんで寝てしまっていた。

翌日、朝から快晴。
この日は昼過ぎまで釣ったら帰る予定だ。

朝ごはんに米を炊いて、半分を昨晩の岩魚汁の残りと合わせておじやに。
もう半分は焼枯らした岩魚を混ぜたおにぎりにした。
おにぎりは行動食として。

   卵を落としたおじや

9時過ぎから川に立つがまだ水温は低い。
昨日と同様、河原に寝転んで水温が上がってくるのを待った。
10時近くになってようやく動き出す。

渓泊地からしばらく遡行すると川は二俣に分かれる。
その二俣の右側の沢にまずは入った。

これまでの開けた渓相から一転、右側の沢は木が張り出して薄暗い雰囲気の沢だった。
それでも大小の岩がつくる落ち込みや小さなプールが点在し、いかにも岩魚がひそんでいそうな渓相だった。
両脇の岩には濡れた苔がびっしりと生えている。
滑らないよう気を付けながら慎重にロッドを振った。

まだ水温が低いままなのか、しばらくロッドを振るも目ぼしい当たりはない。
遠くの方に滝の落ちる音が聞こえてきた。

滝の手前、水の勢いが一段と激しくなった流れの中にある、岩と岩の間。
ゆったりとした小さな窪みに、ポトリとフライを落とす。
落とした瞬間、岩魚がバクッと口を開けて顔を見せた。
無意識にロッドをあげる。と、同時に鉤がかかっていた。
大きさは8寸ほど。
この岩魚が今回の釣行で一番強い引きだった。暴れながら元の岩の陰に戻ろうとするところを慎重にラインを手繰ってネットに収めた。



目の前の滝は比較的緩い傾斜で、左側から簡単に越すことができた。そのあと、1匹釣り上げてNさんと示し合わせて沢を戻ることにする。

二俣まで戻ったところで、どうせならということで今度は左側の沢を少しだけ釣った。こちらは開けていてロッドも振りやすく、途中までは流れも平坦だった。

すぐに6寸ほどの岩魚が釣れた。その後も4〜5匹釣るが、大物には出会わず終い。
12時を過ぎると、気温はずいぶん高く、緑に囲まれた川は春から初夏へと移り変わっていた。

後ろ髪を引かれながらも、また来ましょう、と言い合って帰ることにした。
昨日とは一転して明るい仕事道を延々と歩く。いつもそうだが、帰り道はやたらと長く感じる。

やっとの思いで車止めにたどり着いたあとは、コンビニに向かい、コーラ。
大げさではなく全身に染み渡るおいしさだった。
その後地元の温泉に入って帰途に着いた。

次に来るときもやはりこの季節を選んで来ると思う。




2015年11月19日木曜日

2015シルバーウィーク釣行 後半

3日目


この日も一日中快晴が続いた。昨日の続きを釣るべく9時過ぎに川へ立った。
本流はJさんとNさんが、自分は昨日Jさんが入った支流で釣ることにした。

昨夜、Jさんからある程度その支流の様子は聞いていたが、なるほど魚影はかなり濃い。ポイントというポイントには必ず岩魚はいた。

すぐに7寸ほどの岩魚がかかる。続いて8寸。沢の幅が狭く枝が張り出している。ラインを伸ばして釣る、というよりもなるべく静かにポイントへ近づいてリーダーキャストで「フライを置く」イメージで釣りあがった。
大きめのプールでは2匹かかることもあった。

だいたい1時間半ほど経ったところで10メートルほどの滝が現れた。
ロープは他の荷物と一緒にデポした為、持ち合わせていない。
それまでの釣りで十分すぎるほど釣り欲は満たされていたのでひとまず竿を納め、
荷物一式のデポ地点まで戻ることにした。

2人が戻る時間まであと40分ほどある。
沢の流れる音を聞きながらボーっとしたり、ウイスキーを飲んだり、ティペットを結びなおしたりして過ごした。

ほどなく2人と合流する。本流を行った2人に様子を聞くと、なんと上流で沢登りの二人組に会ったとのこと。しかも俄かには信じられないようなルートでこの沢に降りてきたようだ。
さすがシルバーウィークというべきか…?

そして、今晩の幕営地を見つけるため支流を遡行する。
途中、良さそうなポイントで竿を振った。
そして、尺岩魚が釣れた。

水深70センチくらいのプール手前、#12のアントを流れがゆるくなりかけたポイントにそっと流した。すると、すぐに岩魚が出る。遅合わせ気味に、クッと手首をあげると鉤がかかった手ごたえ。

最初それほど大きくはないと思ったが、竿のしなり具合で意外と大きいことを知る
そんな大事なときに限ってランディングネットはザックに引っかかり、なかなか外れない。慎重に手元に引きながら、ネットを外してなんとかキャッチ。ロッドに巻いた印で測るとちょうど尺だった。



そばにいたJさんに写真を撮っていただいて、一息つく。もう十分に岩魚は確保しているため、すぐに岩魚から鉤を外して流れに戻す。そしてまた、歩き始めた。

3人が横になれて、かつ焚き火もできる広さの空き地。いざ探すとなかなかない。
ひとつふたつ候補となりそうな場所に目星を付けておいたところで、時間切れとなった。
100メートルほど戻った河原で草を倒したり石をどかし、流木をまとめるなど整地してなんとか今晩の幕営地を作

これまでの二晩の経験から今夜はタープを張ることにした。このタープのおかげで、夜露をしのぐことができ、寒さもやわらいだため安眠できた。

夕飯のメニューは前々から「洋食ナイト」と決めていた。
岩魚のカルパッチョ、岩魚のモツと皮とニンニクのアヒージョと、岩魚入りのペペロンチーノを作る。
それに味噌仕立ての岩魚汁となめろうも加える。もちろん、どの料理も最高。

いよいよ、酒がなくなりかけていた。明日の朝のコーヒーに垂らすウイスキーを少し残して、あとは飲んでしまうことにする。
名残惜しいが、どうせ明日は朝早くから脱渓のために動かなくてはいけない。

この晩は明日の脱渓ルートを再確認し、コースタイムを予測するなどした。だいたい6時に起きて8時には行動を開始しなければならない。

4日目



最終日となるこの日が一番気温が高かったような気がする。

Nさんが朝ごはんに昨晩のアヒージョのオイルを使って焼き飯を作った。これがうまかった。コーヒーも焚き火で煮出して作り、ウイスキーを垂らす。一気に目が覚めた。

体はどこも痛くない。今日の行程は、初日のアプローチに匹敵するほどの難コースが予想される。


    まだ余裕があった。
脱渓のコースは幕営した沢を源頭までつめてそのまま尾根まで登り切り、尾根筋をたどる。
そして、初日に休憩をしたピーク、尾根とたどり、車止め地点まで戻る。
もちろん、途中に登山道はどこにもない。 

しばらく沢通しで順調に遡行していたところで5メートルほどの滝があらわれた。
Jさん、Nさんはなんなく越えたが、自分は足がかりの箇所で滑って、ドボン。
胸までつかった。まさか滑るとは思わなかったので動揺した。

その後2回ほど同じ箇所に足を掛けて試すが、滑ってしまいどうもうまくいかない。
そこでJさんがロープを出して、まずザックを引きあげてくれた。
続いても。今まで足がかりを見つけていた側ではなく反対方向からロープを垂らしてもらい、
なんとか登った。  一安心した。



その後、高巻き、シャリバテ、指を切る、などいろいろあったが、何とか源頭まで詰められた。
そして、待っていたのはまたしても強烈な藪だった。 


    強烈な藪を漕ぐ


   そして、尾根へ
思考停止の状態でなんとか藪をかき分け尾根まで登り切った。


気づくと、休憩ポイントとした尾根ですでに13時を回っている。
なんとか日没までには車止めに着きたい。
そしてコーラ、風呂、ラーメン。。。 

行きと同様、複雑に枝分かれした痩せ尾根を、何度もコースを修正しながら降りていく。
今回下ろしたばかりのチェーンスパイクはゴム部分が数か所千切れ、すぐ抜けてしまう状態で履き続けた。それでも、ないよりはましだった。

周りが薄暮の状態になりかけた18時すぎ、ようやく尾根を降りきった。
そこから30分、クサリ場などを抜けて、ようやく車止めに着いた。
へろへろだったが、ものすごい高揚感達成感

なんとか大きな怪我もせず、無事に帰ってくることができた。
それもこれも終始引っ張ってもらった、JさんとNさんのおかげである。

将来、もう一度来ることがあるだろうか?
あの強烈な藪漕ぎも今となっては良い経験だったと思い返すことができる。















2015年11月18日水曜日

2015シルバーウィーク釣行 前半

2015年のシルバーウィーク(9/20~23)、JさんとNさんの3人での釣行。

まくらとして以下、Nさんの計画当初、イベントページに載せた文章を引用したい。

「禁漁を目前に控えた大型連休。もう後がなく、ゾクゾク・ゾワゾワした釣行にすべく、〇〇沢のイベントを作成します。入脱渓に道無き道、情報ほとんどなし、尺の匂いがプンプンする、どの条件をも満たした魅力的な渓だと思います。先ずはこれの入脱渓をこのメンツ、この場で議論。他の渓を検討するにあたっては、これに匹敵するところにしましょう!!とにかく、これは遊びじゃないですね…」

この煽りを受けて奮い立たない源流釣り師がいるだろうか?

7月の前半くらいから打ち合わせ(SNSともつ焼き屋での飲み)を始めるという気合いの入れようで、だんだんと予定日が近づくにつれて気持ちの高ぶりはものすごく、今までの自分の経験を全てそそぎ込み、良い釣行にしたいと思った。

行き先はJさんが以前から目を付けていたという、新潟のとある沢。
とにかくアプローチが複雑で長く、現地に行かないとルートの判断ができそうにない目的地だった。

少ないながらもいくつか過去の釣行記を見つけ読んでみると、そこには40センチや50センチの岩魚が釣れたとの記録があり、期待もふくらんだ。

日程は前日の夜泊も含め4泊4日。自分にとって最長の釣行。食料と酒の計画もしっかり詰めないといけない。
食糧計画は練りに練った。

初日前夜、車止めで軽く飲んで寝る。
ビールやハイボールを買い込んだが、そこそこ冷えるため2本でやめておいた。
装備にも1本と思ったが、削ることにする。

翌朝5時過ぎに出発。途中でいくつか支流を渡り、休憩ポイントとなるピークから複雑に伸びる尾根に取りついた。
やはり、はっきりした踏み跡は確認できない。携帯のGPSを何度も確認しながら 慎重に登っていった。

その途中のこと、Jさんが天然の舞茸を発見した!ほどなくNさんも!!合計2株、しかも立派な。
痩せ尾根の為、下手にはしゃぐことは出来なかったが、一気に気分があがった。
自分は登るのに夢中でキノコに目を向ける余裕がなかった。お二人に脱帽である。

おびただしいシャクナゲをはじめとする藪をこぎつづけ、昼近くになってやっと最初のピークに着いた。時間も押しており、ササッと昼飯を食べてすぐ出発。

    藪の中

ピーク手前の藪漕ぎですでにうんざりしていたが、本当の藪漕ぎはここからが本番だった。

とにかく、あらゆる方向から様々な植物の枝が自分に向って伸びている。
その枝を、腕と手で倒し足で踏む、膝と腿で押しのける。全身をつかって漕ぎつづけた。

そんな状態の藪を進み始めて30分ほど。ふと現在地を見ようとズボンのポケットをまさぐると、入れておいたはずの携帯電話がない。ない!
念のため釣り具やらヘッドライトやら小物を入れておくポシェットの中も見るがない…。
どうやら途中で足を思いきり上げて枝を踏みつけた時に、するりと落としたらしい。

あの藪の中で。。。。しかも防水ケースで真っ黒な携帯を。一瞬、気が動転して戻って探せばすぐ見つかるのでは、という思いがよぎる。が、すでに時間も押している状態で1分でも惜しい。
しかも落とした場所はあの藪の中。

GPSも兼ねた携帯電話なくすことは、下手したら行動不能になる大失態である。
今後の反省、そして今回は自分の身代わりとしてあきらめることにした。
数年後取りにくることができたら来たいけど。  来年は無理だ。
(というわけで、今回掲載した画像は全てJさんとNさんが撮られた画像である。感謝。)

そしてその後も尾根筋を進む間、藪は続いた。
容赦はない…。
基本的に、Jさんが先行して引っ張ってくれたため、ギリギリの時間で進むことができた。 

藪漕ぎは最初、イヤでイヤでしょうがなったが途中からどうやったらうまい具合に押しのけて進めるか、というテクニックを試行錯誤しはじめて、楽しみを見つけた。
そして、ある程度自分のやり方とペースを掴みだすと、なにも考えないで進むことができた。
大げさかもしれないが、これまでの自分の限界を超えた瞬間だった。


とはいうものの、時間が押していることに変わりはなく、このままでは日没に間に合うかどうか、という時間とのせめぎあいの状態が続く。
ここで、一つの決断を下した。

当初計画していた尾根筋ではなく、沢筋を降りるという決断。
滝などの難所に出会う可能性もゼロではなかったが、今の進行ペースと疲労、水の補給などを考え、沢筋を降りていくことにした。

結果的にこれが正解で、途中3か所ほどロープを出したものの、藪が抜けた状態の沢筋をすすむことでペースもあがり、なんとか日没間際の17時半に目的の沢に降りることができた。


この時の達成感は言葉にできないほどだった。


幕営地を見つけ、荷物をおろすとへたり込んでしまった。
できることなら そのまま横になりたいところだったが、目の前に沢があればとりあえずは竿を出したくなるというもの。さすが生粋の釣り師、Nさんがいち早く竿を振り出した。

3人それぞれ散って晩御飯のおかずとするべき岩魚を求めに竿を振ることとした。
ほどなくNさんに1匹かかり、結果数匹の岩魚をおかずにすることができた。

その日の夕餉は舞茸と岩魚のフルコースで盛り上がった。
舞茸は普段食べなれている栽培ものとは比べ物にならないくらい香りと歯応えがよく、炊き込みご飯が絶品だった。

心配していたやぶ蚊も気温が下がるといなくなり、酒はもちろんうまいし、結果的に大成功の初日だった。

見上げると雲一つない夜空に満天の星。それを見ながら眠りに落ちた。
渓泊地。何とか日没までに間に合い、焚火をおこすことができた。

  焚火と天然舞茸ごはんと岩魚舞茸汁。(画像にはないが舞茸のバターソテーも)

二日目
快晴。気温もグングンあがり釣り日和となった。
朝から焚火で米を炊いてしっかり食べ、意気揚々と9時過ぎに釣り始めた。

沢の流れは水量も十分、速さもちょうど良く、川幅も竿が降りやすい。フライにお誂え向きな沢が目の前にあった。

とりあえず、3人で交互に本流筋を釣り上がる。今回用意したフライはイワイイワナとアント、カディスの三種。すべて#12〜#10の大きさ。

   天気は快晴。

まだ朝ご飯の余韻が残る中、Jさんが尺二寸(約36センチ)の岩魚を釣り上げた!
そして自分にも9寸岩魚が釣れる。Nさんも何匹か良い型が釣れている。

さらに期待は膨らんできたところで、急に視界のなかに見慣れない人影が入った。
沢装束の男性が一人。ほどなく後ろから二人歩いてきた。

そのうちの一人は何となく見慣れた顔、というかこの人。。。服部文祥(以下HB)だよ!!
最初に現れた人はカメラマンの、そして百名渓の作者丸山さん!
一人で声も出さず驚いていると、JさんがHBに「HBに似てるって言われませんか?」と聞いている。しかも本気のようだ。聞かれた本人は「言われませんねぇ」という返事w。

どうやら雑誌「渓流」の取材らしい。3人かと思っていたらだいぶ遅れてヘトヘトな1人が加わった。
HB遭遇でずいぶんとテンションは上がったが、4人パーティーとかちあってしまった。

いちおう、先行している自分たちに先に進むよう促してくれたが、「渓流」チームの計画を聞き話し合い、途中で本流筋を交代することになった。
交代した後は影響が少ないように遡行してくれるとのことだったが、どうなるか。。。。

多少の不安を抱えながらも目の前の流れに集中し、かつ楽しみながら釣りあがった。
ずっと先行していたかったがそうもいかず、途中で泣く泣く「渓流」チームと入れ替わることとなった。

その場で、せっかくHBに遭遇した記念ということで一緒に写真を撮ってもらった。
しかも丸山さんに。 みなさん気さくな人たちばかりで、出来ることなら焚火を囲んで酒でも飲みたかった。

その後、しばらく時間を置こうということになり、小さな焚火をおこしてソーメンをゆでた。
ソーメンは暑い盛りの時期が最高と思っていたが、9月でも渓流で食べると最高にうまかった。

    9寸岩魚。力強い引きだった。

そうめんを食べたあとはしばらく3人で釣り上がる。途中の支流にJさんが入るとのことで、そこからはNさんと交互にポイントを分け合った。反応はあるものの、渋い。釣れる型も落ちている。

どう考えても、先行された影響があるようだった。Nさんも首をかしげながら竿を振っている。やはりいくら気をつけて遡行してもらっていたとしても、影響は必至だったようだ。

15時を回ったところで一区切りとして、沢を戻ることにした。そのまま幕営地に戻るのではなくJさんが入った支流とは違うもう一本の支流に入ってみることにした。

入ってみてすぐに岩魚の走る姿が見える。早速フライを流してみると8寸ほどの岩魚がかかった。Nさんも立て続けに釣る。
さっきまでいた本流よりはスレていないようだ。小一時間ほど竿を振ったが、なんとか溜飲を下げる釣りになり、幕営地に戻った。

その日の晩は岩魚の焼き枯らしを仕込み、岩魚汁とごはん、ベーコンのソテーなどを食べた。ウイスキーの残量がすでに、ちょっと心配になってきた…。

本流も一晩おけば、反応も戻るだろう。そんな会話をして酒を飲んだ。

    Jさん考案のアラネット。岩魚汁の中に小骨などが入らず、最後まですくい飲むことが出来る。
  すごい発案だと思う。

その日の夜空も満点の星。Jさんが農ポリタープを用意してくれていたが雨の心配もないので前の晩に引き続きこの晩も張らずに焚き火の周りでゴロ寝するだけだった。夜露がおりてシュラフが濡れるのが気にはなったけど、明日の朝に日光で乾かせばいいだろう。そんなことを考えながら酔っ払って寝た。

3日目につづく。


2015年11月4日水曜日

空見、空耳

過去に某SNSへ投稿した文章を転載します。




先週末、一人で渓流釣りに行ってきました。泊まりで。いわゆる渓泊というやつです。

山奥の谷間で一人のんびり釣りを楽しみ、開けた河原にビニールのタープを張って、小さな焚き火をおこして煮炊きをする。お酒もちょっと(?)だけ担いで、チビチビ飲みながら焚き火をいじるのは、やった人にはわかると思いますが、ちょっと、いやかなり楽しい行為です。

今年は素晴らしい出会いもあり、何人かの方と一緒に渓泊をしたり日帰り釣行もしたけど、今回は一人でした。なんとなく。

初日の釣りは雨に降られましたが、そこそこ釣れて大満足。寝床に決めた場所で、川で冷やしておいた缶ビールを飲みました。


夏至を過ぎたとはいえ、最近でも19時くらいまで明るいですが、土曜日は雨のち曇天だったので18時には薄暮の状態。水を汲みに川に近づくと視線の向こ う、だいたい50メートルくらい後方にタープが斜めに張ってある(ように)見えました。

ちょっと意外だったのは、大した支流も入ってないこの渓流で、先行 者の自分がいるのに後から入渓した人がいたということ。そんな人もいるのかな、くらいで、特に声もかけずそのまま自分の寝床に戻りました。食事も済んでそろそろ寝ようかと思っていたら、あいにくの雨が降ってきました。
風は無風に近かったのでタープで十分しのげそうでした。



遠くから女性の笑い声のような音も聞こえ、それと同時に男性の話し声のような音も聞こえたので、さっき見かけたタープには女性も含めた何人かがいるのか な、もしかしたら沢登りのグループか、と思いました。雨降りで幾分、不安になった気持ちも近くに人がいると思うと、ちょっと安心した気持ちになり、逆に がっかりした気持ちにもなりました。


グループの明日の行動予定を聞きに行くついでに、自分の先行を伝えに行こうかと思いましたが、明日の朝にしようと思い 直して戻りました。

雨は段々と強くなり、12時過ぎにウトウトしかけた時が一番強く降っていました。念のため荷物の整理でもしようかと起きかけると、またもや向こうのグルー プの方から笑い声が。こんな雨でもまだ宴会やってんのかよ、と思って呆れました。なんだか音楽のような音も聞こえます。


整理も済んだ頃には少し雨も落ち着き出し、それに合わせて眠気もまたやってきたので寝てしまいました。起きたのは周りが明るくなりかけた4時過ぎ。途中何度か、ふと起きたりしたのですが、後方のグループに抜かされた気配は感じませんでした。


コーヒーでも淹れようと水を汲みにまた川まで行き、ついでにグループがいた方を見てみると、そこにはタープはなく、代わりにそこにあったのはタープの大きさに似た、一部崩れかけた、かつて護岸していたと思しきコンクリートの壁のようなものでした。


薄暗い中でコンクリートの壁をタープに空見した自分の目の悪さと、なんだかんだで人が近くにいて欲しかった、という気持ちの表れか?といろいろ自分に対し て笑ってしまったのですが、でも夜中に確実に聞いたあの女の人の笑い声と男性の話し声、それと音楽はなんだったのかいまだに不思議な気持ちでいます。


ちな みに、2日目は夜中の雨で増水したおかげで岩魚がよく釣れましたので、抜かされて先行されたような気配はありませんでした…。
という、怖い話に振りきれない中途半端なビビり体験でしたw